その男、ヒモにつき 第15話
- swtmmrs
- 2016年6月15日
- 読了時間: 4分
episode15「思惑」

「私、帰ります!」
「レ、レイカさんちょっと待って下さい!」

「――ッ何するんですか?!」
「僕は...僕はただ、貴方の事を想って...それに、僕と結婚して頂けたらきっとご家族も喜びますよ!お母様も賛成だって仰っていました!」
「離して下さい!」
「嫌な所があるなら言ってください!直しますから!」

――ドンッ。
「――そういう問題じゃないんです!西園寺さんの事が嫌いとか好きとか、私にはよくわかりません!ただ一つ言えるのは、私は自分が本当に好きになった人と付き合って、結婚したいんです!誰と結婚しろなんて、勝手に決められたくない!」
「レイカさん...けど、それは貴方のお母様を裏切る事にもなるんですよ?!それでもいいんですか?!」
「....お母さんお母さんって、どうしてみんな私の気持ちを無視するの?!私は私なのに...!」

「――はい、そこまで。とりあえず手ェ放してもらっていいッスか?」
「キョウスケ君...?!どうしてここに?!」
「ッ何なんですかあなたは?!」
「逆にこっちが聞きてぇッスよ。けど、見たとこ友達ってわけでも無さそうッスね。レイカちゃんすげぇ嫌がってるし。」
「レイカさんッ、この人は一体誰なんですか?!...まさか、レイカさん...?」

「...行こう、レイカちゃん。」
「キョ、キョウスケ君...!」
「....」

「...あーあ、こりゃ派手にフラれちゃったね、おにーさん。ま、諦めるこったな。見た感じ、あの二人の間に割り入るのは無理そうだぜ。」
「....なんで...あんな....」

「ただいまーっと。」
「おっそいよジョージ!!ってか、キョウちゃんは?」
「あー...キョウスケなら綺麗なねーちゃん掻っ攫ってどっか行ったよ。」
「...は?!なにそれ、どういうこと?!」
・・・

「....ハァ....流石に駅までは追っかけてこないだろ。」
「...そうだね。」

「――なんか、ごめんねキョウスケ君。面倒な事に巻き込んじゃって。」
「え?あぁ、別に大したことないよ!俺なんもしてねぇし。」
「...ふふっ、ありがとう。」
「――で、あの人は誰なの?」

「...お見合い相手。お母さんが無理矢理決めたの。大企業の御曹司なんだって。」
「へぇ~...えっ、てかレイカちゃんお見合いしてたの?!」
「お見合いって言っても、そんな改まったものじゃなくて二人で一度食事しただけなんだけどね。で、その時に今度一緒に映画観に行かないかって誘われて。」
「あぁ、今日映画観に行くって言ってたもんね。」
「うん。でも、今日映画観に行ったら終わりにしようと思ってたの。もう会わないって。」
「なるほどね...」
「けど、色々あって失敗しちゃってね。気付いたら彼の実家に連れて行かれそうになってた。でも、そこにまさかのキョウスケ君登場で、無事救出されたって感じかな!」
「ハハッ...そっか、そうだったんだね...」

「――なんか、俺レイカちゃんの事なんも知らないんだね。自分の話ばっかで、レイカちゃんの話、ちゃんと聞こうとしなかった。こんなに困ってたのに...」
「...ううん、私が自分で話さなかっただけだよ。お見合いの事も...どうしてかな、なんとなくキョウスケ君には知られたくなかったの。」
「――俺さ。あの時、状況もよくわかってないクセに、咄嗟にあの人の手掴んでた。」
「うん...」
「...もしかしたら、俺が知らないだけであの人がレイカちゃんの彼氏かもしれないのに。なんでだろうね、すげぇ嫌だったんだ。」
「...キョウスケ君。」
「――多分、妬いてた。」
「....えっ?」

――ピンポンパンポン♪『まもなく、1番線に電車が参ります。白線の内側に―。』
「あっ、そろそろ電車来るね!じゃあ俺、さっきの店戻るから!レイカちゃん、帰り気ィ付けてね!」
「う、うん!...じゃ、また後で。ありがとうキョウスケ君!」
「うん!」

――プルルルルルル♪
「(無断で出てきたのはマズかったよなぁ...どうしよう、すげぇ怒ってたら...)」

「――あっ、もしもし?!レンさん、すいません!ちょっと、友達の女の子が...え?あ、はい!大丈夫ッス!...わかりました、じゃあまた明日、よろしくお願いします!お疲れ様でした!」
――プッ。
「...よかったぁ...早くもクビになったらどうしようかと思ったぜ...さて、俺も帰るかぁ...」
・・・

「...西園寺さん、怒らせちゃったかな。もうちょっとやんわり断った方が...」

「...あーもう、いいの!終わった事なんだから。折角キョウスケ君が助けてくれたんだから、感謝しなきゃ!」

「――それにしても、最後にキョウスケ君が言った事...聞き間違いじゃ、ないよね?」
・・・

「あー、なんかどさくさに紛れてとんでもないこと言った気がする!」

「――けど、嘘じゃねえし...レイカちゃん、どう思ったかな。俺は――。」
・・・

「...ふ、こういう時はメールじゃなくて電話の一本くらいくれたらいいのに...でも、あの人らしいわね。」

「――あら、レンまだ起きてたの?」
「...今後のスケジュール組んでた。」
「ふふっ、気合入ってるわね。」

「――あ、そうだ。新しく入ったギターの人...キョウスケ君、だっけ?」
「あぁ。」
「もう一緒に活動してるんでしょ?。今度、私も会ってみたいな。」
「...なんでまた?」
「VLEUGELの期待の新星だもん、どんな人かこの目で見てみたいのよ。ね、いいでしょ?」
「...まぁ、そのうちな。」
「ありがとう!ふふ、楽しみ。じゃあ私はもう寝るから、レンも夜更かししすぎないようにね。おやすみなさい。」

(――悪く思わないでね、レン。)
to be continued...
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