その男、ヒモにつき 第12話
- swtmmrs
- 2016年5月14日
- 読了時間: 5分
episode12「期待」

「ただいまー!」

「――あれっ、キョウスケ君まだ帰ってないのかぁ。残業...とか?」
・・・

「――というわけで、今日からうちのグループに仮加入ってことになったから。よろしく。」
「は、はぁ...」

「でも、本当に俺で大丈夫っスか...?マジで単独路上ライブくらいしか経験ないですけど...弾き方も完全に自己流だしー...」

「...いいんだよ、とりあえずやってみな。その路上ライブだって、好きでやってきたんだろ?違うのか?」
「あ...いや、そうです!好きでやってきました...!」
「だったらそのままでいい。今までどおりやってくれ。」

「――今後が期待できないようなら、すぐ切るから。その時はレン、貴方も...いいわね?」
「...はい、分かってます。」

「――じゃ、何かあったら連絡頂戴。」
――バタン。

「ん、ジョージ何やってんの~?」
「新曲の仕上げだよ!...よし、完了。あ~、夏フェスでお披露目してぇなぁこれ...」
「夏フェス来月じゃん!間に合わなくね?」
「何言ってんだよ、期待の新星が目の前にいるじゃねえか!」
「すげぇ無茶振り!(笑)...けどわかんねぇな!もしかしたらいけちゃうかもね~♪」
「ま、マジっすか...?」
「割とマジ、だよ。」

「――あの、さっきレンさんがあの...レイナさん?と約束したことって、本当ですか?」
「約束?...あぁ、あれか。どうだろうねぇ。まぁ、あの人も結構頑固だから、マジで新しいボーカルとギター探す羽目になるかもしれねぇな。」
「そんな...」

「――つぅか、レンが抜けるならうちは解散だよ。ボーカル変わったら全く別物になっちまうし。」
「えー!!マジかよ~...今のうちに俺拾ってくれるバンド探しとこうかな~?」
「...ユウヤ、お前そんなに薄情だったのかよ...」
「やだな~、冗談に決まってんじゃん!(笑)」
「や、やっぱり俺...」

「――二人ともおふざけはその辺にしとけよ。...お前も、真に受けんな。あの事は考えなくていい。」
「け、けど俺...正直不安しかないっていうか...上手くやれる自信なくて...」
「誰だって最初はそうだ。自信なんて後から自然とついてくるもんだからな。」
「そうそう、てか始めっから自信満々なやつほど信用出来ねぇよな。」
「確かに~!しかもそういう人に限って自己中で融通聞かなかったりするしね~!」
「ハハッ、まさかキングオブ自己中のユウヤからそんな言葉が出るとはな!(笑)」
「え~~!!ジョージひどくね?!っていうか、俺そんなに自己中?!」
「悪ぃ悪ぃ、キングオブは言い過ぎたな!ほどほど、ってところか(笑)」
「何だよそれ~~!!」

「――まぁアレよ、そんなに気張んなくていいから。けど手は抜かないようにな。」
「そうだよ!もしなんかあってもほら...そん時はジョージがなんとかしてくれるから!多分!(笑)」
「お前ほんっと人任せだな~...あっ悪ぃ電話。もしもし?...あぁ、ナナちゃん!この間はありがとね。...今夜?空いてるよ、どこ?...20時ね、了解。」
「え~何~?また新しい彼女~?」
「あ~...まぁそんなとこかな?」
「そんなとこってどういうことだよこの~!!」
「んじゃ、俺はこの辺で失礼するわ。これからよろしくな、キョウスケ。」
「あ、はい!よろしくお願いします!お疲れ様でした!」

「...なんか、モテるんスね、ジョージさん。」
「そうなんだよ~!...あっ、こないだキョウちゃんの働いてたセブン行った時にバイトの女の子ナンパしようとしてたよ!ミヤビちゃんって言ってたかな?」
「マジっスか?!...あぁ、そういえばジョージさんのファンだって言ってたな...」
「なんとかレン君が阻止してくれたから無傷で済んだけどね!ね、レン君!」
「...あんま覚えてねぇな。」
「えぇ?!(笑)」

「――ま、そういうことだ。お前なりに頑張ってくれ...キョウスケ。また後で連絡する。」
「は、はい!」
「...じゃ。」
「...ッあの!」
「?」
「...ありがとうございます!精一杯頑張りますんで、よろしくお願いします!」
「――あぁ。よろしく。」
――バタン。

「――さてと、俺も帰るかな~...あそうだ、もしあれだったらバンド用におNEWのギター持っといた方がいいかも!」
「あー...確かに新しいギター欲しいなぁとは思ってたんスよね。」
「そっか!ウィンデンバーグの公園の近くにBLUE SOULSっていう楽器屋があるから帰りにでも寄ってみるといいよ~、ド派手なブルーの外観でデカイギターのオブジェが置いてあるからすぐ分かると思う!ちょっと店員のおねーちゃんが怖いけどね(笑)」
「そうなんスか?行ってみます!」
「じゃっ、これからよろしくね、キョウちゃん!」
「はい!よろしくお願いします!」
・・・

「――ここか!確かに分かりやすいな...」

――ガチャ。
「お邪魔しまーす...」
「――っあぁまた負けた!...あ、いらっしゃい。」
「(ユウヤさんが言ってた店員さんってあの人か...THE・ロッカーって感じだな...)」

「――おぉ、すげぇ。色々あるなぁ...」

「...ん、あのギターは...」

「へー!こんなのもあるんだなぁ...このユニオンジャックのやついいかも...ロックバンドっぽいっつーか...」

「――それ、いいよね。アタシも好き。」
「(い、いつの間に...)あ、あぁこれいいっスよね!売ってるの初めてみましたよ!」
「一点物だからね。ちょっと高いけど、アタシがお客さんだったら買ってるね、それ。」
「ハハハ...(商売上手というかなんというか...でも確かにいいよな、このギター...)」
「もしよかったら試しに弾いてみて。」
「えっ、いいんスか?」
「うん、どうぞ。」

「...♪~♪...♪...(おっ、いい感じだな...しっくりくる。)」
「――お客さん、もしかしてプロだったりするの?」
「えっ?!あ、いや...(今日からプロの仲間入りしましたー、とは流石に言えないよな...)もしかしたら近々メジャーデビューするかも...みたいな...?」
「マジで?もうデビューしてるのかと思ったよ、すごい上手いじゃん!」
「そ、そうっスか?ははは!(お世辞なのか本当なのか...)」

「...よし、これ気に入りました!買います!」
「おっ、毎度あり。頑張ってね、未来のロックスターさん。」
「あ、ありがとうございます!(言いたいけど我慢だな...)」

「はぁ...なんか夢みたいだなぁ...はやく帰ってレイカちゃんに報告しなきゃ!びっくりするだろうな~!」
・・・

「...キョウスケ君遅いな~...何かあったんじゃ...」
――ピロロンパンポン♪
「...!」

「もしもし、キョウスケ君?...あっ...西園寺さん...?えっ、映画?明日ですか?!(うわぁすっかり忘れてた...どうしよう...!)」
to be continued...