その男、ヒモにつき 第9話
- swtmmrs
- 2016年4月29日
- 読了時間: 5分
episode9「刺客」

「――はい、コーヒー。」
「ありがとう...」

「――で、何があったの?聞かせてくれないかな?」
「...うん、実はさ....」
――3日前。

「♪フンフンフーン」
――ピロリロリロン♪

「いらっしゃいま....!!!」

「――よお、キョウスケ。こんな夜中までごくろーさん。頑張ってるみてえじゃねえか!」
「りゅ、リュウジさん....(嘘だろおい...なんでこの人がここに...)」

「い、いやぁまぁ...へへっ...てか、リュウジさんどうしたんスか?」
「ん~?ちょいとキョースケちゃんにお願いがあってね~!」
「な...なんスか...?(ダメだ、イヤな予感しかしねぇよ...)」

「――金、貸してくんねぇかなぁ?今金欠でよぉ、困っちゃってんだよねぇ。」
「(....やっぱりか....)え、えぇ....」

「い、いやぁ~...それが、俺も今金無くて大変なんスよね...空から金が降ってきたらいいのになぁ~なんて(笑)それか宝くじでも当たればなぁ~ハハハッ...」
「ハッ、ありえねえだろ。で、いくらなら貸してくれんの?」
「(...誤魔化せるわけねぇよな)...すいません、正直無理です。ほんとキツイんで、今。」
「――は?」
「いや、だからあの...ほんと無理なんです...すいません。」

「テメェ、ふざけんじゃねえぞ!!!まさかお前、俺にどんだけ貸しがあんのか忘れたわけじゃねえよな?!あぁ?!」

「(ヤベェよおい!!完全に怒らせちまったじゃねえか!!)い、いや!あの、そうじゃなくて、違うんスよ...!」
「何がどう違うってんだよ!!適当な事ぬかしてっと脳天ぶち抜いてウィンデンバーグの海底に沈めるぞ?!」
「ヒッ....!」

――ドタドタドタ!
「どっ、どうしたんですか?!」
「み、ミヤビちゃん...」
「おい!!!どうなんだよ!?この俺に金貸せねえってのか?!あぁ?!」
「と、とりあえず落ち着いてくださいよリュウジさん!他にもお客さん来るかもしれないんでもう少し声のトーン落として、」
「俺に命令すんじゃねえ!!!」
「す、すいません!!」

「だいたいよぉ!!金がねえなんて嘘だろ?!聞いたぞ、お前ちゃっかりストリートライブなんてやってるみてえじゃねえか!!それで小銭も稼いでんだろ!?少しぐらい俺に分けても罰当たんねぇだろ!!どうなんだよ!?」
「(な、なんでその事を...?!)た、確かにそうですけど自己満でやってるようなもんですから、稼ぎって言えるほど儲かっては...」
「なんだよ!!そんなに誤魔化してまで俺に貸したくねえのか?!あぁ分かったよ!!そっちがその気ならなぁ、こっちだってなぁ!!」
「いやあの、違うンすよ本当に...(もうダメだぁ...)」

「まぁまぁお兄さん!そんなに怒らないで下さい!
持ち合わせ少ないんでアレですけど、今日はこのくらいで勘弁してもらえませんか?」
「ミヤビちゃん...!」

「――おぉ!悪いねぇお姉ちゃん、ありがとよ!...ったく、お前と違ってこのお姉ちゃんは優しいなぁおい?また来るからなキョウスケ、覚えとけよ?」
――ピロリロリロン...

「ミヤビちゃん、ごめんね...後で必ず返すから...!」
「ふふっ、いいんですよ。先輩にはいつもお世話になってますし!休憩室で5時間くらい爆睡してるのもオーナーには秘密にしててくれますしね!」
「(な、なんか複雑...)助かったよ本当に...」
・・・

「そ、そんなことが...」
「もー、恥ずかしくて正に穴があったら入りたい状態だったよ...」
「ずいぶんタチが悪いね、その人...どういう繋がりなの?」
「昔のバイト先の先輩で...俺が仕事でちょっとヘマしても色々フォローしてくれて良い先輩だと思ってたんだけど、辞めてから何かとつけまわされるようになってさ....また来られたら困るから泣く泣くコンビニも辞めてきたし...」
「えぇっ?!辞めちゃったの?!」
「うん、だってまた迷惑かけたくないし...ハァ...」
「う、うーんそっかぁ...」

「――また新しいバイト探すよ、今度は絶対バレないような...けど1からやり直しかぁ...あぁ頭痛ェ...」
「キョウスケ君ならきっと大丈夫だよ、コンビニで働ければわりとどこでもやっていけるっていうくらいだし!」
「そうかなぁ...あぁ、けどもうあの漫喫も使えないんだったな...」
「えっ、どうして?」
「今日、漫喫でなんとなく外眺めてたらさぁ...いたのよ、リュウジさんが...なんかうろうろしてたけど、もしかしたら誰かから俺の居場所聞き出したのかもしれない...あぁどうしよう...」
「し、しつこいな~その人...」

「――じゃあ、さ...お金が貯まるまでうちに住む?アトリエに使ってるからちょっと散らかってるけど1階の部屋なら空いてるし...あ、もちろんキョウスケ君が嫌じゃなければって話だけど!」
「えっ!いいの?!ありがとうレイカちゃん...!毎回毎回レイカちゃんに助けられてばっかりだね、俺...」
「いいのいいの、困ったときはお互い様っていうか....」
「本当にありがとう...!恩に着るよ...」
「いつかライブチケットで返してね!(笑)」
「はーい(笑)」
・・・

「あ~、腹減った!今日はもうこのまま飯食って帰ろーぜ...」
「ダメに決まってんだろ!ちゃんと練習しとかねぇと夏フェスに間に合わなくなるぞ?」
「ちぇ~...」

「――つうかさ。考えたんだけど、やっぱギター探した方がよくねえか?ギターメインの新曲とか、なんか良いの作れそうなんだよね。」
「だよな~俺もそう思ってた!新生VLEUGELの誕生です!的な?面白そうじゃん!」
「またその話かよ...」
「レンが今のままのVLEUGELが好きな気持ちも分かるけどよ、一度大きな賭けに出てみるってのも、悪くないんじゃないかと思ってさ。」
「そうそう!何事も挑戦だよレン君!レッツチャレーンジ!!」
「...ったく...」

「もしギター探すとしたら、やっぱオーディションかな?俺達3人で長机にゲンドウ座りしてさ、なんか面白そうじゃん?!」
「ゲンドウ座りってなんだよ...まぁそうだな、オーディションが一番無難かもな。」
「...いや、オーディションはダメだ。」
「え~なんで?じゃあどうすんのさ~、レン君誰かいい人知ってたりすんの?」
「....」
to be continued...