その男、ヒモにつき 第14話
- swtmmrs
- 2016年5月31日
- 読了時間: 7分
episode14「不如意」

「おはようございまーす。」

「おっ、キョウちゃん来たね~!おはよう!」
「おはよーさん。昨日はちゃんと眠れたか~?」
「いや~、なんかドキドキしちゃって6時間しか寝れなかったんスよ~」
「十分じゃねえか!(笑)アレだぞほら、これからどんどん忙しくなるから6時間寝れてた頃が恋しくなるぞ~?」
「えぇっ?!そんなにヤバいんスか?!」
「だねぇ~、俺なんかベース抱えて立ったまま寝てたことあったし!(笑)」
「マジっスか...じゃあ俺も今のうちにギター抱えたまま寝る練習しとかないと...」
「...いや、流石に今のは嘘だぞ。」
「も~~真に受けちゃって、キョウちゃんったら純粋なんだから~♪」
「えぇっ嘘っスか?!...あれ、そういえばレンさんは...?」
「あぁ、レンは今ひとりボイトレ中。そろそろ戻ってくると思うぞ。」
「なるほど...」

「――あっ、今流れてるの新曲っスか?」
「ピンポーン♪」
「だよ!率直に、どう?この曲。」
「今までの曲とまた違った感じでいいと思いますよ!なんだろ、ちょっとアコースティックな...あ、もしかしてこれが例のギターメインの...?」
「またまた正解~♪」
「この曲を今年の夏フェスでやろうと思ってるからさ...キョウスケには本腰入れて頑張ってもらわねえとな!」
「マジッスか...!ちょっと荷が重いな~...というか、もしかして夏フェスの会場ってあのウィンデンバーグの超デカい公園だったり...?」
「また正解~!すごいねキョウちゃん、冴えてるぅ~♪」
「あ、あざっす...(でいいのかこれ...)」
「デカいっつったって大したことねぇよ、こんぐらいだよこんぐらい。」
「(...どんなだよ!)や~でもめちゃめちゃ緊張して固まっちゃいそうッスね...最悪ちびるかも~なんて...ハハッ...」
「大丈夫大丈夫、最初は確かに緊張するだろうが、5分もすればもう観客がじゃがいもにしか見えなくなってくるからよ!」
「じゃ、じゃがいもッスか...?!(それはそれで逆に混乱しそうだ...)」

――ガチャ。
「あっ、レンさんおはようございます!」
「...おはよう。全員揃ったな。」

「――じゃ、ざっと音合わせしていくか。」
「おっけ~!」
「あいよー。」
「はい!...あ、あの昨日バンド用に新しいギター新調してきたんスけど...」
「お、キョウちゃん早速買ってきたんだね!」
「そうか。まぁ、とりあえずは昨日ここで弾いてたギターを使ってくれ。どれでも違和感なく弾けるようにしとかないと、もしもの時に困るからな。」
「あ~確かにそうだね~。NEWギターのお披露目は後のお楽しみにとっておくってことにしとこっか!」
「なるほど、了解です!」
・・・

『...♪...♪~♪...』

「――ん~、さっきのとこ、ちょいと急ぎ過ぎな気がするな。もうワンテンポ遅らせてみて。」
「はい!」

「...なんとなく揃ってきたな。もう一回始めから通しでやってみるか。」
「わかりました!」
「いいねいいね~!キョウちゃん、なかなかサマになってきたよ~?」
・・・

「――レ、レイカさん...普段はそういう感じなんですか...?」
「え?えぇ、まぁ...(完全に引いてるわね、いい感じ!)」

「基本的にラフな格好が好きなので~...あ、夏場は家の中パンイチで過ごしてたりもしますよ~!(今、とんでもなく恥ずかしい事言った気がする...しかも嘘だし...でもまぁいいよね、これで終わりだし!)」
「へ、へぇ~...そうだったんですね...意外です...」
「そうですか~?(でしょうね!)」
「...レイカさん。」
「はい?(さぁ来い...!)」

「――素敵です!!」
「....はい?」
「いや~、正直最初はびっくりしましたけど、そういう感じのレイカさんも良いなぁと思って...レイカさんの意外な一面を見られて良かったです!!」
「えっ...あ...(待ってよこれ、まさか効果なしってことなの?!)」
「あっ、そういえばレイカさん観たい映画決めてきました?」
「...あ~...実は今あんまり観たいのなくて...」
「そうなんですか?じゃあ、シムダーとかどうですか?評判良いみたいですし!」
「じゃあそれで...(悟りモード入りました、私。)」

「ではそれにしましょう!...あ、もうすぐ始まっちゃうから急がないと!」
「は、はぁ...(なんかさりげなく手を繋がれてる気がするけど気のせいだよね、うん)」

「いや~、映画館で映画見るの久しぶりだな~!レイカさんは?」
「え?あぁ、そうですね...私も久しぶりに来ました。」
「この上映前のドキドキ感、いいですよねぇ...初めて映画館に来た時の事を思い出しますよ...」
「はは、確かに...(なんでこんな時に限ってガラ空きなのよ...)」

「レイカさんは、どういうジャンルの映画をよく見るんですか?」
「え?なんだろう...まぁ、色々見ますけど...コメディとかアクションとk」
「コメディ!僕も好きですよ!くだらないけど笑えるやつとか、ゆるくて良いですよね!」
「(よく話を遮るな~この人...)ところで、この映画ってどういう話なんですか?」
「あぁ、よくある恋愛映画みたいですよ。全米が泣いた、みたいな!評判は良いから、面白いんじゃないかな?」
「(よりによって恋愛物なの?!)そ、そうなんですか...」
「恋愛映画もたまには良いですよね~...あ、始まりますよ!」
・・・

「(...なんだろうこの...否めないタイ●ニック感...)」

「(あ~完全に失敗だよこれ...西園寺さんも飽きてるんじゃ...)あの、西園寺さ...」

「...うぅ...ぐすっ...」
「(....嘘でしょ?)」
・・・

「いや~、良い話でしたね!僕、つい泣いてしまいましたよ!」
「あ~...そうですね...(私はこの状況に泣きそうです)」

「――あ、そうだ。レイカさん、この後空いてますよね?ちょっと付き合ってほしい所があるんですけど!」
「...えっ?!いや、今日は映画だけ見て帰るつもりで来たんですけど....」
「いいからいいから!行きましょう!」
「え、えぇ...」
・・・


「うわ~、旨そう...!」
「あ~、焼肉がよかったな~!ピザも悪くはないけど~...」
「...文句があるなら食わなくていいぞ。」
「...いえ、いただきます。というか食べさせて下さい。」

「――でもアレだな、キョウスケ早くもうちに馴染んできた感じだな!」
「えっ、そうっスか?!」
「だね~!もう紹介なしでいきなりTV出ても違和感ないかも!(笑)」
「意外とそういう初登場もアリかもな!(笑)」
「ま、マジッスか...?」

「――まぁ、この調子でいけば近いうちTVに出ることにはなるだろうな。」
「て、TV出演か~...街頭インタビューにすら出たことないのに、大丈夫かな~俺...」
「大丈夫だよ~!足組んで適当にうなずいとけばそれっぽく見えるから!」
「いや、キョウスケが言ってんのはいきなりTVで生演奏できるかどうかってことじゃねえの?」
「えっ、そっち?!」
「や~、どっちも...ッスかね...」
「まぁ大丈夫っしょ!」
「ああいうのも慣れだよ、慣れ。」
「そういうもんなんスかね~...」

「てか、TV出演くらいでビビってたら夏フェスでステージ立った瞬間キョウちゃん気絶しちゃうんじゃないの~?(笑)」
「あ、ありえる...ってか、マジで俺夏フェス出る可能性あるんスか?!」
「あるよ、80%くらい!なぁ、レン!」
「...まぁ、そうだな。とにかく、今はひたすら練習積んで夏フェスに備えたほうが良さそうだ。」
「マジか...頑張ります...!」

「...やべ、ヤニ切れで頭痛くなってきたわ。ちょっと外で一服してくるから、先食ってて!」
「も~、タイミング悪いな~ジョージ!タバコってそんなに美味しい~?」
「美味しいか不味いかじゃなくてだな~...つうか、お前も昔吸ってたじゃねえか!(笑)」
「そうだけど、もう3年も前に止めたじゃん!百害あって一利なしだよあれは!」
「まったく、よく言うぜ...」
「...まぁ、そう言うなら先食ってるよ。」
「おう、すぐ戻ってくっから。」
「そういえばキョウちゃんはタバコ吸わないの?」
「あ~、一回だけ吸ったことありますけど俺はなんか合わなくて止めました!」
「なるほどね~...」
・・・

――シュボッ。
「...ったく、ユウヤはホント調子良いよな~...」

「...ん?」

「...だから私は...」「...いや、ちょっと顔見せるだけですから...」
「なんだ?痴話喧嘩か...?」

「レイカさん、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか!というか、レイカさんのお母様には承諾してもらえましたよ?レイカさんも大丈夫だって言ってたって...」

「――ッ私はそんな話聞いてません!ただ一緒に映画観に行くだけだって言うから来ただけで、西園寺さんのご両親とお会いするなんて話は知りませんでしたよ!」

「あ、ジョージさん!ユウヤさんがピザにタバスコかけて良いかどうか聞いて来いって...どうしたんスか?」
「ん?あぁ、見てアレ。なんか喧嘩してるみてぇだけど、止めたほうがいいんかな?」

「えっ?...!!」

(...レイカちゃん?!)
to be continued...