その男、ヒモにつき 第13話
- swtmmrs
- 2016年5月22日
- 読了時間: 4分
episode13「喜びの裏側」

――ガチャッ。
「――なんだ、いたのか。」

「おかえりなさい。ふふっ、いない方がよかった?」
「別にそんなこと言ってないだろ。...ただいま。」
「コーヒー淹れるけど、飲む?」
「...あぁ。」

「....」
「どうしたの?何かあった?」
「...新しいメンバーが入った。」
「えぇっ、そうなの?良かったじゃない!もしかしてギター担当?」
「...うん。ほぼ素人なんだけどな。」
「素人?それは随分と思い切ったのね!上手くやって行けそう?」
「まぁ、大丈夫だろう...アイツなら。」

――ボスッ。
「...ねぇ、今度のライヴ、その人も出るの?」
「ん...どうだろうな。進行具合によっては、出ることになるかもな。」
「そっか~...私も観に行ってもいい?」
「...いいけど、周りにバレないように気を付けろよ。」
「ふふ、わかってるよ。楽しみだな~」
・・・

「ただいまー...レイカちゃんごめん!遅くなって!」

「おかえり、キョウスケ君。大丈夫だよ!どこか寄ってきたの?」
「あ、うん...というか聞いてよレイカちゃん!」
「?」

「――VLEUGELのギターにスカウトされた!!」
「...へ?」
「ほら、前にセ○ンでVLEUGELのレンさんに会ったって話しただろ?それっきりだったけど、バイト先のスタジオでまた偶然出っくわしてさ!うちのバンドでギターやらないかって!!」
「――えぇっ?!嘘でしょ?!」
「俺も最初なんかのドッキリかと思ったよ!!けど本当なんだよコレが...今でも信じられねぇよ...」
「ちょ、ちょっとキャパ超えそうだから一旦落ち着かせて!」

・・・
「――えーっと、キョウスケ君が、その...レンさんに直々にVLEUGELの新メンバーにスカウトされた、ってことで合ってるのかな...?」
「うん、そうだよ!その後ほかのメンバーにも会ったし、間違いないよ!」
「嘘みたい...すごいねそんな、正直信じられないけど、嘘じゃないんだもんね...」
「これで嘘だったらやけに手の込んだドッキリだよね!(笑)」

「でもほんと...まさかこんなに早くキョウスケ君の夢が叶うなんて...!」
「うん...あ、でも俺はまだ武道館行けてないから!まだだよ!(笑)」
「あっ、そっか!そうだよね!まだ先があるよね!」
「そうだよ!そん時はレイカちゃんには絶対特等席に座ってもらうから、待っててね!」
「...うん!」

「――あ、ごめんキョウスケ君、明日朝から...友達と映画観に行く約束してるから、もう寝るね!」
「そっか!こんな遅くなっちゃってごめんね、おやすみ!」
「ううん、大丈夫だよ。おやすみなさい。」

「お、レンさんからだ!...明日の朝8時スタジオ集合か、りょーかい、と!」

「あー...なんか実感沸かないなー...でも本当なんだよな...そういやちょっとレイカちゃん元気無かったみたいだけど、なんかあったのかな?俺の事でびっくりしただけ?」

「は~、なんか久しぶりに疲れた~って感じだな...明日から頑張んなきゃ...!」

「――キョウスケ君、すごいなぁ...まさかいきなりメジャー、それも大人気の実力派ロックバンドに仲間入りなんて...それに比べて私は...」

「...やめやめ!キョウスケ君はずっと努力してきたことが報われて、やっと夢が叶ったんだから、応援しなきゃ...!」
・・・

「――よし、これでOK...かな?ちょっとラフ過ぎるか?...いや、練習に行くだけだし、大丈夫だよな!」

「レイカちゃんは...まだ起きてないか。友達と映画観に行くって言ってたけど...まぁ、レイカちゃんしっかりしてるし、ちゃんと起きられるよな。俺みたいにズボラじゃないし!」

「――じゃ、行ってきまーす。」
・・・

「――はぁ、寝すぎちゃった。キョウスケ君、もう行っちゃったよね。」

「...キョウスケ君の事、すごく嬉しいはずなのに何故か心に引っ掛かりがあるのはなんでだろう...メジャーになったら、キョウスケ君が遠くに行っちゃうような気がするから...?そういえば今日の映画の事も友達と行くなんて嘘ついちゃったな...キョウスケ君と一緒に住んではいるけど付き合ってるわけじゃないし、嘘つく必要ないのにな...あぁ、映画行くのもなんか憂鬱だ...西園寺さんとお付き合いする気無いのに...どうしたら...」

「――あ!良い事思いついちゃったかも!」
・・・

「(レイカさん、まだかなぁ...)」
「――西園寺さん!」

「あっ、レイカさ...」

「ごめんなさ~い!待ちました~?」
「えっ?!あ、いや...」
「(ふふ、効いてる効いてる!とにかくギャルっぽく...を目指してる途中でなんか変な方向に行っちゃったけど、これならドン引き間違いなし!)」

「なんか~道が混んでて、だいぶ遅くなっちゃってすいません~!映画、間に合いますかね~?」
「あ、大丈夫かと...それよりレイカさん...」
「えっ、何ですか~?(さぁ、言って!やっぱり帰りましょうと...!)」
to be continued...