その男、ヒモにつき 第7話
- swtmmrs
- 2016年4月16日
- 読了時間: 4分
episode7「羨望と抑圧」

「はい、お待ちどうさん!」
「おー!美味そー!」

「あ、テレビつけてもいいッスか?」
「あいよー」
――ピッ

『――今夜一組目のゲスト、VLEUGELの皆さんです!』
「おっ、これか!ほんとに芸能人だったんだな...って当たり前か(笑)」
『『『よろしくお願いします』』』

『今、10代~30代を中心に、幅広い年齢層の方々に大人気の皆さんですが、今後の音楽活動に対する意気込みをお聞かせ下さい。』

『――今までもそうでしたが、これからも俺達は俺達なりのやり方というか、流行に合わせたスタイルに変えていこうとか、そういう気は全く無いので、分かる人にだけ分かっていただけたらそれで充分だと思ってます。』
「...とんがってんなぁ...」

『――ジョージさんは、曲作りにおいて心がけている事などはありますか?』
『...そうですね、僕は誰かのカバーだとか、オマージュのようなものは嫌いなので、自分達だけのスタイルを取り入れた曲を考えています。』

『――これからも、常識に囚われない新しい曲を作り続けていきたいです。』
『ありがとうございます。では、スタンバイの方をよろしくお願いします!』
『――それでは参りましょう。現在ヒット中の新曲、VLEUGELで「NEVERLAND」』
・・・







『――パチパチパチパチ.....』

「――すげえな...確かに、今まで聴いたこと無いようなメロディーだ...」
「...お客さん、ラーメンびろんびろんに伸びてるよ....」
・・・


「――本当久しぶりねレイカ!仕事の方はどうなの?毎日我侭な患者の面倒看させられて大変でしょう?いつ帰ってきたっていいのよ、あなた一人くらい働かなくたって大丈夫なんだから!」

「...大丈夫だよ。確かに大変なところもあるけど、すごくやりがいのある仕事だし。私、看護師になるのがずっと夢だったから。」
「そう?でも無理しないでよ、それで体壊したら元も子もないんだから!」

「――そうそう!お見合いの話なんだけど、先方にレイカの写真見せたらとても気に入ってね!今度是非うちの息子と会ってもらえないかって言うのよ!」
「...そうなんだ。ところでお母さん、今日お父さんは...?」
「あぁ、お父さんは今日は戻ってこないわよ。色々と忙しいのよ、分かるでしょ?」
「そっか...」

「――こんな美味しい話なかなかないのよ、あなたが向こうの息子さんと上手く行けばうちだって一生安泰なんだから!どう、悪く無いでしょ?」

「――ごめんなさい、お母さん。私まだ結婚する気はないの。仕事だって、今やっと落ち着いてきたし、これからだから...それに、結婚相手は自分で決めたいの。自分が好きになった人と付き合って、幸せな結婚をしたいのよ...」
「だって....」
「だからごめんなさい、私はその話には乗れないよ。」
――ガタッ!

「――どうしてうちの娘達はこうも親不孝者なのかしら!!レイナだって好き勝手やって戻ってきやしない!!少しぐらい言う事聞いてくれたらどうなの!!せっかく綺麗に産んでやったんだから!!」
(――あぁ、また始まった。)

「――分かった!分かったから、そう怒らないでよお母さん。とりあえずその息子さんと会ってみればいいんでしょ?」
「...!」

「...レイカ、やっぱりあなたなら分かってくれると思ってたわ!レイナとは違うものね!良かったわ!実は、あなたが了承してくれたら今夜あたりディナーでもどうかって先方に言ってあるのよ!まだ時間もあるし、ね?!」
(――了承も何も無い癖に。)

「――分かった、支度しておくから向こうに電話しておいて。」
「ええ!あっ、ちゃんと綺麗な服を着て行くのよ?髪もきちんとセットしてね!」
「分かってる。」

(――いつもこうだ。お母さんは自分の思い通りにならないとすぐヒステリックになって...)

「――この部屋も久しぶりね...全然変わってない。」

「...私はお母さんの操り人形じゃない。私には私の生き方があるはずなのに...」
――ドスッ。

「――でもいいわ、少しくらい聞いてあげようじゃないの。それでお母さんが満足するなら...」
・・・

「――よし、バッチリね。ふふ、髪巻くのなんて久しぶりだなぁ。」

「...大丈夫、適当に話合わせつつ、そっけなくしておけば向こうだって察してくれるはず。とにかく会えばいいだけなんだから。」

「場所は...徒歩で20分くらいね。まだ時間もあるし、歩いていこう。」
to be continued...